平成20年3月、大相撲荒汐部屋稽古見学(於 大阪府豊中市稲荷神社)


 毎年3月に大相撲春場所が開催されますが、その際には府内をはじめ、関西圏各所に相撲部屋は滞在します。
 当然、豊中を『春場所拠点』とする相撲部屋があってもおかしくないわけですが、意外とその数は少なく、私の家からかなり離れている上、交通の便も良くない市南部に、一つ二つあるだけでした。
 それが、平成20年より、私の家から程近い、そして通っていた幼稚園のすぐ隣にある稲荷神社にて、宿舎を構える部屋が登場しました。
 その名は荒汐部屋。師匠の荒汐親方は元小結・大豊で、昭和58年初場所には、新大関若島津に土を付けています。
 その四股名からして、思わず“大”阪府“豊”中市出身を連想しそうですが、実際には新潟県魚沼市の出身です。

 地元への相撲部屋登場の報に、思わず目を輝かせた私は、春場所初日も2日後に迫っていた平成20(2008)年3月9日、稲荷神社に稽古見学に行ってきました。
 初の、場所前の相撲部屋での稽古見学。以下にその模様をお伝え致します。



※右側(西方)の画像をクリックすると、一つ下(次の段)の画像にジャンプします。


東 方

西 方


荒汐部屋のテントが張られている、豊中市稲荷神社の境内です。
のぼりも立っていて、「本当に相撲がやってきたんだ」と思いました。

テントのアップ。自分の生活圏で『荒汐部屋』という相撲部屋の
文字は、何だか新鮮に見えます。右側の、透明になっている
部分の中が、ちょうど見学席になっています。



稲荷神社を望む方向に、のぼりを撮影。のぼりは2本立っており、
この日はご覧のとおり、天気もほぼ快晴でした。

こちらは鳥居を含めたショット。左の画像でも鳥居の一部が
画面に入っていますが、そのきれいな朱色とのぼりが、
実によく似合っていますね。



さて、ここから稽古風景に移ります。4人の弟子の姿が見えますが、
土俵上、顔がこちらに向いていて正にぶつからんとしている力士は、
現在十両の蒼国来です。この2年後の初場所で晴れて新十両に
昇進し、私はその翌春場所初日の、勝った相撲を見届けました。

さあぶつかりました。蒼国来が頭をつけて右からおっつけようとします。
相手は左を差し込もうとしています。因みにこの相手というのは、
体型から見て福轟力(最高位幕下)だと思います。この当時は本名の
赤井で取っていました。そして後方に立つ2人は、左側が力山
(当場所初土俵)、右側が寛龍(同じく当場所初土俵)です。



さて、新弟子2人が見守る(見学する)中、蒼国来と福轟力(赤井)
の取組が続きます。復興力が右から起こそうとするところを、
蒼国来は頭を付けて凌ぎます。

右の廻しを取った蒼国来が、出し投げで飛ばして勝ちました。
やっぱり蒼国来はこの時から強かったのですね。のちに
関取第一号になったのも頷けます。



さあもう一丁です。蒼国来、気合い十分の表情。一方の福轟力も、
汗が光り、体がほてっています。拡大版はこちら

ぶつかりました。今度は蒼国来は右の上手を狙います。福轟力は
やや窮屈な左四つの体勢となるのでしょうか。後方で新弟子の
寛龍が膝の運動をしています。



両者の攻防。福轟力が不十分な左四つから前に出ます。
蒼国来は右おっつけで凌ぎます。

蒼国来残った。福轟力は左前ミツに手が掛かりかけています。
蒼国来の右の上手は遠くなっています。拡大版はこちら



頭四つの体勢になりました。蒼国来は福轟力の差し手を下から
あてがい、一方の福轟力はそれを殺そうとします。向かってこちら
側の両者の手は盛んに動きがあるのですが、反対側(奥側)の手は、
あまり攻防がありません。この両者は、蒼国来が右、福轟力が
左のケンカ四つなのでしょうか?

熱戦終わって仕切り直しです。この2人の取組が、最後までずっと
続きました。後方左側、四股を踏むのは序二段の五十嵐です。



さて、再戦。今度も四つの立ち合いで、蒼国来は右の廻しを狙い、
福轟力はそれを嫌おうとしています。この左手の曲がり具合だと、
カチ上げ気味の立ち合いも出来るかも知れません。拡大版はこちら

今度も頭四つの体勢。お互い体勢を低くして勝機を窺っています。
なお、両者の位置は入れ替わっており、向かって左が福轟力、
右が蒼国来となっています。先ほどと同じように、福轟力が差し手を
延ばせば蒼国来はおっつけて制していますが、反対側の手に
なっていますね。という事は左上の画像で述べたケンカ四つ説は
外れた可能性があります。いずれにしても、両者なかなか中に
入れない(入らせない)あたりは、力が互角という事でしょうか?



一層体勢を低くして、両者土俵を丸く使って攻めます。
相変わらず頭四つ、そして手四つの体勢です。

ここで初めて師匠が画像に登場します。元小結・大豊の荒汐親方。
蒼国来に、何やらアドバイスを送っている様です。かなりの番数の
稽古をして、蒼国来の髷はかなり乱れていますね。



さて、もう一枚、師匠の姿です。ちょうど同じ列に並ぶ形で私が
座っていたので、この様なアングルで顔をゲットするのが精一杯
でした。現役時代は185cmと、力士としては中くらいの身長となる
のでしょうが、やはり一般人の私が見たら、大きな師匠でした。
なお、左奥では蒼国来が力水を口にしています。

しばしの仕切り直しの後、再戦。今度はまともにぶつかって
両者廻しの位置が近くなっています。



右を差し、左もハズ押しが効いているでしょうか?前に出て
寄り切り。蒼国来が勝ちました。やはり勝負では、のちの関取
第一号に分がある?

今度の再戦では福轟力が左肩から当たる様な格好で前ミツを
狙っています。蒼国来の右差しは殺されかけている様子。



しかし結果はまたも蒼国来が勝ちました。最後はガッチリと
左前ミツを引いていました。福轟力が狙っていたところを、
蒼国来のほうが取ったんですね。それにしても、汗でほてって
いる両者と、色白の新弟子2人のコントラストの妙よ・・・・・。

ここで福轟力が新弟子に、乱れた髷を結い直してもらいます。
その間、蒼国来はタオルで汗を拭き、しばしの休憩。



これも新弟子が、兄弟子の髷の元結いをし直しているところです。
決して、「オイ、もっとしっかり勝てよ。オラア!」と言って、新弟子が
兄弟子の髪をグイグイ引っ張るお仕置きをしているのでは無いので、
念のため。・・・・・っていうか、そんな怖い事出来る新弟子はいない!

しばし息を整えた2人は、再び稽古を始めます。立ち合い、今度は
蒼国来が右の上手を狙える体勢です。福轟力の左差し手の方が
殺されました。拡大版はこちら



さて、ここで一瞬ですが見学席の様子を。大分時間が経ってきて、
何人か帰って行った人もいたのですが、ご覧の様な状況でした。
まだまだ寒い季節。それも朝の7時〜8時台と来ていましたので、
みんな厚着をして見学しています。私も手前に写るストーブで、ひた
すら暖を取っていましたね。小さな子どももいますが、静かに行儀よく
見学していました。稽古中はとにかく静かに見学が厳守です。

さて、稽古は続きます。今度は蒼国来が右おっつけ、福轟力が
左が窮屈になりながらも、こじ入れて前ミツ狙いという体勢になって
います。この様に、立ち合いのたびに何度も両者の体勢が入れ
替わり、交互に有利・不利な体勢が展開されるのが、三番稽古の
醍醐味だと思います。拡大版はこちら


またも福轟力の髷が乱れてくる中、右の廻しを狙い、一方で相手の
右差し手を左から掴んで嫌っています。蒼国来の左は、まだ廻しに
手がかかっていない様ですね。

番数を重ね、両者必死の形相。福轟力がグンと腰を割り、左を
延ばして下手を引きました。一方、蒼国来の強烈な左おっつけに、
福轟力の右は殺されている格好。体(たい)が起きてきている
蒼国来、苦しい格好です。拡大版はこちら



福轟力が頭を付け、左前ミツのいいところを取りました。
一方、上体が起き、アゴが上がってきた蒼国来、ますます
苦しい体勢です。拡大版はこちら

ハイ、最後は福轟力が、先代玉ノ井親方を思わす拝み寄りの様な
格好で、蒼国来を寄り切りました。途中の攻防はあるも勝負では
連戦連敗だった福轟力ですが、最後は一矢報いましたね。この
取組では完全に体(たい)が起きてしまっていた、蒼国来でした。



さて、部屋のホープにして兄弟子、部屋頭の蒼国来は、休む暇が
ありません。ここで、ずっと土俵を見守るだけだった新弟子クンが
登場します。まだ細身で色白。頭もスポーツ刈りの力山です。およそ
力士らしからぬ体型ですが、この時はまだ体重70kg未満。だが、
思えば白鵬も、最初は体重60kg台からスタートしたのですよね。

ホレ、もう一丁!新弟子がぶつかります。こうして胸を出すのも、
部屋頭の大事な勤め。土俵外では福轟力が息を整えます。
果たして将来、幕内での姿を見られるのか?拡大版はこちら



よし!ホラ、押せ、押せ!と、新弟子を押させます。
よく見られる、場所前のぶつかり稽古というやつですね。
しかし、この日はごく軽めに行われたという印象でした。

今度は摺り足の稽古を付けます。何といっても、摺り足は相撲の
基本ですからね。師匠が見守る中、コツコツと指導をする蒼国来です。


力山が摺り足で、土俵を一周してきました。まだまだ、力山と
呼ぶには細過ぎる体に見えますが、これからどんどん体重も
付けて、幕内まで上がってきてほしいと思います。土俵外では、
力山の兄弟子、五十嵐が見守ります。拡大版はこちら

「ヨーシ、今日はここまで。」新弟子の摺り足稽古が終わりました。もう
一人の新弟子、寛龍は、依然“直立不動”の様で・・・・。拡大版はこちら



さあ、この日の朝稽古も終盤。最後はみんなで摺り足の稽古です。
一人一人、摺り足で土俵を直進します。これには全員が参加
しました。中央に写るのが先程の力山。決して目をこすっている
のではありません。摺り足の際の、基本の手の動きです。

新弟子の寛龍が摺り足をしますが、なかなかピタッと決まって
おり、力山より体がある事があって、力士らしい雰囲気に見えます。
同期の桜、出世頭となるのはどちらでしょうか?拡大版はこちら



最後は仕上げの四股。土俵周囲に力士が並んで行います。

この四股踏みを見て、この日の稽古見学は終了となりました。
荒汐部屋の力士のみなさん、お疲れ様でした。


 以上、平成20(2008)年3月9日に見学した、荒汐部屋の朝稽古の様子をご覧頂きました。
 同じ相撲ネタでも、こういうレポートは初めてとなりましたが、みなさん、いかがだったでしょうか?
 自分の地元圏内に相撲部屋が宿舎を構えるというのは、長年夢見てきた事でもありました。だからそれが叶って、大変嬉しかったのですが、いかんせん朝が早いのと、季節的にまだまだ寒いのが難点でした。
 画像で振り返る限り、部屋の再先輩である蒼国来と、重量級の福轟力の稽古は、なかなか白熱している様に見えます。ただし実際には、間近で力士の稽古を生で見る迫力はあったものの、およそ『火花の散る様な激しい稽古』というレベルではなく、全体的には、やや大人しい稽古風景だったかなという印象は、否めないのが正直なところでした。
 それ故、この翌年以降はまだ一度も見学に行っていないのですが、今では関取も誕生した事で、稽古場の雰囲気も一味も二味も違ってきているのではないかと思います。
 まだ若い衆ばっかりで、集客力に乏しかった初見学の時と違い、一層引き締まった稽古場というのを、また味わってみたいと思います。
 最後に、公開が見学2年余り後と、大変遅くなってしまいましたが、蒼国来関、十両昇進本当におめでとうございます。 


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