大相撲 平成22年名古屋場所十日目[前編]


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東 方

西 方


初日の一週間前まで開催が危ぶまれ、ようやく開催にこぎつけた
平成22年名古屋場所。大相撲史上ない異例ずくめの開催となった
名古屋場所は、表彰式はおろかテレビ中継までもが中止になって
しまうという、本当にファンとしては何とも気の抜けた様な場所に
なってしまいました。そんな名古屋場所にしかし、私は今年も足を
運んできました。こんな状況だからこそ、一生懸命に土俵を務めて
いる力士たちの姿を認識するには、生の観戦が不可欠だったの
です。毎年撮影するこののぼり。しかし、郷土のヒーロー、琴光喜の
のぼりが存在しないのは、何とも寂しい限りでした。

昨年まではプレハブの建物があった相撲案内所。建築上の問題が
あったという事で取り壊され、今年はご覧の様なテントとなりました。
画面中ほど、『入場券あります』の文字が、心なしか寂しげに見えて
しまいました。それなりに客足があったことに、どこかホッとした
気持ちを覚えたのも事実ですが、やはり少なく感じた・・・・・。



いざ館内に入れば、そこはいつもどおりの土俵の展開、館内の光景
です。土俵上、取り組んでいるのは、元十両の出羽鳳(右)と若龍勢
で、かつて十両での姿を見た事もある出羽鳳は、大阪市東住吉区
出身の地元力士。糖尿病のため、三段目下位まで落ちてから幕下
中位にまで番付を戻し、この場所も3連敗4連勝という離れ業で
勝ち越しを決めました。この日も寄り切って勝っています。

こちらは、確か幕下の勢(いきおい)が勝った瞬間だと思います。
豪快に相手(竜電)を裏返しにして投げ飛ばしました。勢も大阪府
は交野市の出身で、地元力士です。交野市は京阪沿線ですが、
京阪沿線といえば、地元のホープ、寝屋川市出身の豪栄道が
謹慎のため、全休だったのは残念な限りです。



十両土俵入りです。本来なら、テレビ中継も行われるはずの、十両
土俵入り。しかし、中継用のカメラやスタッフはおりません。そして
放送席の照明も点きません。こうなってくると、「いつもと違う」という
違和感を、肌で感じる事は避けられませんでした。今場所新十両の
力士は、化粧まわしの晴れ姿を、テレビ越しに伝えられない・・・・・。
何とも切ない、気の毒な状況に置かれているなと感じました。ことに
顔が見える一番右の力士は、新十両で父親が元小結・佐田の海。
四股名も継いで、二代目佐田の海として十両昇進を果たし、本来
なら新十両紹介としても非常に話題になっていた筈です。顔も父で
ある先代によく似ており、それだけに、テレビ中継が行われていれ
ば、度々アップで映されていた事でしょう。そして顔のが見える一番
左の力士は、同じく新十両の魁聖です。拡大版はこちらから

左の画像が西方の十両力士で、こちらが東方の十両土俵入りです。
この土俵入り。幕内や横綱なら、ハイライト番組でも多少は映るで
しょうが、十両となると、今場所は生で見ない限り、見るチャンスが
ありません。正直、十両土俵入りを見られるのがこんなに貴重だと
感じた事は、ありませんでした。テレビに映らなくて寂しい化粧回し達
も、会場に来たお客さんはしっかり見届け、カメラにも収め、そして
拍手と声援を送っていました。当に『生観戦の特権』。しかしこの
特権は、一場所限りで返上といきたいですね。



たっぷりと塩をまくのは新十両の魁聖。ブラジル、サンパウロの出身
です。ブラジルといえば、ちょうど20年前にブラジル公演が行われ、
特集番組を見た事を思い出します。なかなか廻しの色も渋い魁聖、
こうした仕切りや塩をまく姿も、テレビ中継のないこの場所は、生でし
か見られません。やはり中継が恋しくなりました。拡大版はこちら

この日の魁聖は境澤との対戦でしたが、寄り倒して勝ちました。
これで6勝4敗。結局14日目に勝ち越して、8勝7敗でした。



この一番は、大ベテランの土佐ノ海が、上林を土俵際の突き落とし
で破った一番です。後手後手に回りながらも、最後まで勝負を諦めない
土佐ノ海。このあたりが、長寿の秘訣なのかも知れません。そして
土佐ノ海は、西十両7枚目で8勝7敗、それも千秋楽の勝ち越しだった
のですが、翌場所は入幕を果たしました。諸事情の影響とは言え、
本当に異例中の異例といえる大抜擢入幕です。

塩をまいたは、先ほど記述した、新十両の二代目佐田の海です。
やはりこうして見ても、面差しが父親を思い起こさせます。そして、
先ほどの魁聖同様、新十両の土俵姿は、生観戦でしか見れませ
ん。あまり上手く撮れませんでしたが、のちのちの記念のためにも
と、この日は特に気持ちを入れて撮影に望みました。私は動画が
無く、静止画像のみですが、残そうと思います。拡大版はこちら



気合いのこもった表情で塩をまく、益荒海です。現在、21歳の
新鋭で、今年春場所が新十両でした。名古屋場所では、私は
正面のツイン席から観戦(1人で使用)する事が多く、位置的に
このようなアングルになります。拡大版はこちら

益荒海のこの日の対戦相手は、ベテランの実力者、元関脇の
玉乃島でした。幕内で、再三12勝の大勝ちを果たした玉乃島
相手に、最後はうまくさばかれて、ご覧のように相手の両足の
間にトンネルダイビング負けです。悔しそうな表情がいかにも
若手らしい。御当所愛知県豊田市出身で、琴光喜が去った今、
今後はこの若手の頑張りが名古屋のファンを燃えさせます。



十両4場所目の蒼国来です。小兵の部類ですがなかなか相撲は
器用な印象を受けますね。とにかくこの力士のすごいところは、幕下
以来、10場所もの間、ずーっと勝ち越しが続いている事です。
決して大勝ちはしませんが、着実に勝ち越しを続けて、翌秋場所に
は新入幕を果たしました。いわゆる謹慎陥落の影響によるラッキー
昇進ではなく、上位でしっかり勝ち越しを果たしての昇進です。

仕切りを続ける蒼国来。来年の春場所には、我が地元の稲荷神社
に、幕内力士としてやってくるのはほぼ確実です。ぜひ、その姿を見
に行きたいですね。蒼国来の相手は徳真鵬です。拡大版はこちら



組み合う両者。左が蒼国来ですが、右を深く差しており、実に215kg
ある巨漢の徳真鵬に、決められかけているように見えます。しかし
ここから食い下がるのが蒼国来です。粘り強さがありますね。

見事!最後は土俵際近くに追い込まれながらも、左から出し投げ
気味に潰しました。右差し出も抜いています。このあたりの粘りと、
最後の思い切りのいい業が真骨頂。幕内上位に進出してきた暁に
は、人気力士となるでしょう。当に『小よく大を制す』です。



西方幕の内土俵入りです。この場面も今場所は、テレビでは夕方の
ハイライト番組の冒頭に辛うじて写るか写らないか。じっくり最初から
最後まで見ることは、生でしか出来ませんでした。力士にとって、いろ
んな方から贈呈された化粧回しを締めて、土俵入りを披露するのは
一番の晴れ舞台。テレビを通じて、贈呈者始め、多くの人に見てもら
いたい事でしょう。とりわけ新入幕力士はそうです。だから、この晴れ
姿を、全く中継無しの会場で披露する事に対しては、多くの力士が物
足りなさを感じていたはずです。もちろん「そんな事は言える立場じゃ
ない」と認識していた力士もいると思いますが・・・・。それでも館内の
お客には、しっかりと見届けてもらえます。拡大版はこちら

土俵入りの最後、両手を上げる場面です。この、両手を上げる前に
化粧回しをヒョイと持ち上げる動作がありますが、あれは四股を踏む
という動作が、幕内の人数増大にともなって簡略化されて、あの様な
動作になったとの事。人によって、手を控えめに上げたり、万歳のご
とく思いっきり上げたり、個性が見られて面白いです。左端に写る
高見盛は、まるで自分の顔を危険から守るかのごとく、顔の直ぐ前
に手の甲が来る格好になっていますね。



土俵を下りる幕内力士たちですが、カメラのピントは、最も撮りたかっ
た魁皇に、見事に合っています。時に38歳。これほどの老兵大関を、
未だかつて見た事がありません。また、22年相撲ファンをやっていて
も、まさか大関のまま、38歳まで現役を続ける力士が現れようとは、
思ってもみませんでした。その上、幕内在位も102場所目、大関在位
も区切りの60場所目で、通算勝ち星も1005勝。幕内勝ち星も837勝
です。これほどの記録ずくめの大関を目の当たりに出来る事を、本当
に幸運に思います。毎年、「今年が最後だろう。今年こそ最後だろう」
と思って見てきましたが、恐らく魁皇の最後の目標は、今年の九州場
所を現役で務めるという事なのではないかと思うのです。という事は、
来年の春場所は・・・・・?またやってきたら奇跡です。

続いて東方幕の内土俵入りです。阿覧、白馬という新進気鋭の
力士の姿が見えますね。ちょうど大関・琴欧洲が上がってきたとこ
ろで、この後大関2場所目の把瑠都が上がって、しんがりを務めま
した。東西とも、謹慎休場の力士が多い影響で、土俵入りに登場
する力士も少ないのが響いてきますね。拡大版はこちら



東方幕内力士が両手を上げます。一番左のほうに把瑠都がいます
が、自身の右手が陰になって、ちょっと見えにくいですね。この時も、
放送席付近の薄暗さがやけに目立っていました。拡大版はこちら

横綱・白鵬土俵入りです。一人横綱3場所目。しかし現状では、まだ
当分、一人横綱の時代は続きそうです。心底『国技大相撲』を愛する
白鵬にとっても、この場所は辛い場所となりました。その胸中は本人
のみぞ知るでしょう。それにしても、白鵬はこの時41連勝中。この翌
場所には、遂に横綱・千代の富士の53連勝の記録を抜き去りました。
明治時代、相撲界には『角聖』と呼ばれた常陸山という横綱がいまし
た。白鵬から遡ること50代、第19代の横綱ですが、明治〜大正期に
かけて活躍、この時代の『角聖』でした。そして昭和時代に入ると、
双葉山が『昭和の角聖』として長く横綱に君臨。そして平成の現在、
その双葉山の連勝記録に迫る記録を樹立したのが、白鵬です。出身
こそモンゴルですが、将来は日本への帰化も予想され、心の中は、
日本の大相撲そのものに近付きつつ白鵬。私は数年後には白鵬が、
平成の角聖』と呼ばれる気がしてなりません。拡大版はこちら



せり上りに入るところですが、少しタイミングが早過ぎて、まだ充分に
腰を割り切れていません。横綱土俵入りの理想のショットを撮るのは、
素人にとってはなかなか難しいものです。

この一枚が、今回一番よく撮れた、せり上りの場面です。本当にどっ
しりと、風格たっぷりの横綱になったものですが、もし白鵬が雲竜型の
土俵入りをしたならばどんな感じになるか、一度、見てみたい気もしま
す。当に『平成の角聖、ここに在り』です。拡大版はこちら



行司が翌日の取組を紹介する、読み上げ。これを見たのは、かなり
久しぶりの事でした。確かにこれは、進行に余裕が無かったらやり
ませんから、謹慎による休場者が多く、取組数が少なかった今場所
は、出来る日が多かったかも知れないですね。この場所、新入幕が
懸かっていた蒼国来の名前が見えますね。

中入り後の取組です。この一番は木村山−琴春日で、十両の
琴春日が勝ったところです。謹慎休場していた力士が全員日本人
だった事もあって、中入り後の日本人同士の取組は非常に少なく
なっていました。そんな中での、これは日本人同士の一番でした。



敗れた木村山が、照れ笑いを浮かべながら立ち上がります。幕内
在位8場所目。昇進4度目。過去3場所連続幕内を務めた事もあり
ながら、一度も勝ち越しを果たしていなかったのが木村山でした。
「今場所こそは」との思いでいくも、12日目には5勝7敗と、後が無く
なってしまいました。しかしそこから3連勝して悲願の勝ち越し。

館内が沸いたこの一番。注目力士同士の対戦。左が新入幕の
臥牙丸。そして右が、この場所絶好調、初日から9連勝中だった
豊真将です。不祥事が続いていた中、礼儀正しさでは折り紙付き
の豊真将が全勝でひた走るというこの展開は、何やら相撲ファン
へ向けての強烈なメッセージである様に思えてなりませんでした。
健全なイメージを取り戻すべく、当代きっての『マナー力士』が、
第一人者白鵬とともに“再生場所”を引っ張る・・・・・。臥牙丸も、
晴れの新入幕、中継カメラも懸賞もほとんど無い状態で務めなけ
ればならないのは、同情の余地もありましたが、翌秋場所は
無事中継が復活して、やれやれ・・・・・でした。



土俵上そんきょする、臥牙丸と豊真将。それにしても『臥牙丸』とは
面白い四股名ですね。何となく、この力士には凄く合っている様な
気がするし、語感的にも覚えやすくて丁度いい。本人も気に入ってい
るのではないでしょうか?202kgの巨漢を生かして、『ガガーッ』と出て
いく相撲を取る、そして四股名はズバリ、臥牙丸!こういうキャッチ
フレーズが出来れば、人気力士になると思います。拡大版はこちら

10連勝が懸かった相手が、新入幕の巨漢力士という事で、私は
豊真将も少し硬くなるのではないか?と見ていました。しかし結果は
全くの杞憂に終わりましたね。プレッシャーなど全然無いという内容の
相撲で落ち着いて新鋭をさばき、余裕の勝利でストレート二桁を飾り
ました。前頭筆頭で勝ち越しや、2場所連続11勝の大勝ちをした
実績を持つ豊真将。さすが、精神力もダテではありません。



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