我が心のバレンタイン:青春 八重桜物語
仕事納めの日の夜、不思議な夢を見た

 12月28日、この日で私の職場は仕事納めとなった。
 今年一年も、色々な事があった。本当に多忙で、しかし充実した1年であった。夕方帰宅すると、ドッと疲れが出てきた。トロに去られたショックを抱えつつ、仕事はあと一息で今年の業務が終わるという気持ちで、ラストスパートをかけていた。それだけに、急に力が抜けて、いつもの仕事納め以上の【区切り】を感じたのである。


 その晩・・・・・、私は不思議な夢を見た。
 もう死んだはずのトロが、何食わぬ顔をして散歩をしているのである。しかも、連れている人は私でも飼い主でもない。なんと、七絵だったのだ。
 七絵がトロの散歩をさせている・・・・・!?一体どうなっているというのだ??


 トロは、一番晩年の散歩の仕方をしていた。すなわち、弱くなった後ろ足を引きずり、たびたびヨロけそうになりながら、ゆっくりゆっくり歩くという散歩である。そして七絵は、トロの横に立ちながら見守っていて、その後ろを、私が付いて歩いていたのである。
 場所は、トロの家のすぐ前の道。実際にトロが散歩で歩いていた道である。あたりは静かで、物音一つしない。空は真っ暗ではないので、夕刻といったところだろうか?ただ、かなりモヤがかかっている感じで、あまり視界が利かない状態であった。そして・・・・・、
 最も“奇妙”だったのは、七絵の服装である。何と、クリスマスパーティーの時に着ていた、仮装姿だったのだ。七絵はパーティーの時、仮装で天使の格好をしていた。確か前の年のクリスマスパーティーでは私自身が使っており、七絵に、「それ、去年俺が着てたやつやで。」と言ったのをよく覚えている。その天使の衣装を着て、七絵は普通に犬の散歩をしていたのである。で、その後ろに私・・・・・。


 私は目の前の光景を見ながら、首を捻っていた。
 「おかしいな。トロと七絵は、会える事が無かったはずなんだが・・・・・。七絵と出会わない内にトロは死んでしまったのに、何で一緒に歩いてるんだろう・・・・・?」


 夢の中でも、どこかで現実を分かっていた様である。だからひたすら不思議がっていた。しかし、七絵が仮装姿で外を歩いている事については、何一つ疑問に思っておらず、これこそ、後から考えれば不思議な話である。そして私は、七絵に一言も声をかけようとしていなかった。七絵もこちらを振り向く事は無かったので、結局お互い、顔は見ないままだったのだ。トロと七絵の顔合わせが実現している事に、一人疑問を感じながらも、
 「ま、いいか。取りあえず付いて行こう。」と、後ろからゆっくり歩みを進めた。


 そこで夢は終わり、目が覚めた。


 「・・・・・。何と不思議な夢を見たんだ・・・・・。」
 翌朝起きた後も、暫くは『夢の続き』にいる様な心地で、どこか変な感じだった。しかし、妙に何かを象徴している、そして暗示している様な夢に感じられて、その後もこの夢の記憶が消える事は、なかった。
 私はこれまで、何度か夢に七絵が出てきた事がある。
 ある時は何故か一緒に、ハイキングかピクニックに出かけていたり、またある時は、私がどこかの家の中にいたら、いきなり七絵が「お待ちどお!」と言って入ってきたりした。どれも“謎”な内容ばかりであるが、トロを散歩させていたというこの夢が、私が夢の中で七絵に逢う最初となった。




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