我が心のバレンタイン:青春 八重桜物語
『人生最長の4ヶ月』の末、遂に果たした再会!!

 2005年4月17日・・・・・。
 夢で見るほどに待った、お花見の日がやってきた。あのクリスマスパーティーから丸4ヶ月。しかし軽く10年には感じたのではないかと思うくらいの、【人生最長の4ヶ月】を送った末に、遂に七絵との再会の日を迎えたのだった。止まっていた時間が、トクトクと音を立てて流れていくのを感じた。


 前夜は興奮して眠れなかった。直前1週間ぐらいは本当にテンションがピークで、ドキドキワクワクする気持ちを抑えるのに手を焼いた。ちょうど連日好天にも恵まれていた事で、なおさら外は明るく、視界も眩しく感じられたものだった。あれほどの胸の高鳴りと興奮というのは、長い人生を通じても、そう何度も味わうものではないだろう。


 当日、まずは天気が好かった事で、ホッと一つ力が抜けた。そしていざお花見に行くに当たっては、自分なりに最大限の気合い≠入れたのである。
 先ず上の服は、国旗がたくさんプリントされた、カラフルで目立つTシャツを着て、周りからの注意を集めやすくした。Tシャツは半袖で、当日は、半袖を着るにはまだ少し寒かったのであるが、お構いなしだった。そしてその上にはジージャン。私は日頃、ジーンズを好んではいない。若い頃にはジーパンも履いていたが、今は一着も持っていないし、ジージャンは一着だけ持っているが、あまり着ていなかった。しかしこの日はジージャンと決めていた。自分の中で、ジーンズというのが『若さの表現の象徴』となっていたからだ(ゆえに普段はジーンズを好まない。『若さ』を求めるのが気恥ずかしいからである)。
 下はジャージを履いた。やはり運動しやすい格好をする事が、『エネルギッシュで若い』という自分を演出する近道だと考えたからである。ジャージもかつて劇団にいた時には、レッスンや舞台稽古で毎週履いていたが、ここ数年は履く機会が無く、久しぶりの出番となった。
 靴はもちろん、先日買った白い運動靴。初お披露目であった。バドミントンセットや名刺もバッチリOK。そして、バドミントンのラケットを入れるためというのもあったが、カバンはいつもの肩掛けカバンではなく、adidasのスポーツバッグを使った。元気一杯で育ち盛りの七絵から、「一緒に遊ぼう」と誘ってもらうためには、カバン(バッグ)もスポーツチックな物にする方が、より『アピール度』を増すと思ったのである。
 準備万端。出かけ際に母が言った一言は、「丸でスポーツの試合に出るみたいやな。」


 午前10時半頃、集合時刻より30分早く、集合場所である万博記念公園の中央口に到着した。視界にゲートが入った瞬間から周囲を見回したが、オカンと七絵はまだ来ていなかった。何人かの同僚が私を見て、「何か根箭さん、今日ちょっといつもと違いますねえ。」と言ってきた。
 私は、遅れて来た人に入場券を手渡す係になり、開始時刻になっても暫くは入場門前で待機する事になったのだが、どうやら一番遅れてくる人というのが、オカンと七絵のようである。「ここで2人が来るまで待って、来たら会場の場所まで誘導してきて下さい。」と、入場券係の職員から言われた。
 「これはエラいラッキーじゃないか!」と思った。というのも、みんながいてワイワイ賑やかなところでは、七絵に例の名刺を手渡すタイミングがあるかどうか、少々気になっていたからだ。最初にしばらく並んで歩くのだったら、その間に十分渡せる。


 「まだ来ない・・・・・。」胸の鼓動が勢い付く中、私は深呼吸をしながら待った。こういう時の時間は長く感じるものだが、【人生最長の4ヶ月】を耐え抜いた事を思えば、何でもない長さだと思った。
 と・・・・・、見えた!!2人の姿が。ようやく来た!七絵との再会、今まさに実現!!
「ゴメ〜ン!遅くなってぇ。」足早に歩きながら、オカンが声をかけてきた。そしてその横に七絵。
 「ずいぶん背が伸びたな〜」というのが、再会の第一印象だった。
 「アンタ、ほれ!挨拶しいな。」とオカンに促されて、七絵はひと言、「こんにちは。」と言ってきたが、どこか不機嫌そうな感じだった。私はやや戸惑い気味に、「久しぶりやなぁ。」と返し、これが4ヶ月ぶりの会話第一号になったのであるが、直後にオカンが、「この子なぁ、朝が苦手で機嫌悪いねん。今朝も私に叩き起こされたからな(笑)。」と言ってきたのを聞いて、「ああ!」と安心した。私だって、朝はすこぶる苦手である。


 ゲートから私達の会場の場所までは、5分は歩く距離があった。私はタイミングを逃すまいと、ゲートを入るとすぐに名刺を手渡した。
 「へー!ねやたろう≠チていうんや。」七絵が開口一番、言ったのを聞いて、「ああ、やっぱり俺の下の名前を知らなかった。名刺を作ってよかった〜!」と思った。そして犬の写真を見て、「めっちゃ可愛い!」とも。そう、七絵も犬を飼っているもんな。つまり犬好きなわけだ。
 何回か会話を交わしている内に、会った直後に覚えた妙な緊張感も消えて、気持ちがほぐれてきた。「良かったな」と思ったがしかし、同時に私は気付いていた。ある別の感情が自分の中に流れ込んできたのである。名残惜しさという感情が・・・・・。


 今会ったばっかりなのに、何故いきなり名残惜しさなのか?
 自分でも、この予想外の感情の流れに、最初はビックリした。しかし考えてみたら、『逢う』という望みが叶った以上、後はもう、終わっていくしかないのだ。苦しい時間は長く感じるが、楽しい時間はアッという間に過ぎゆくもの。今日一日、きっと瞬く間に時間は流れ去り、気が付けばもう、お別れの時間が来ているに違いない。そしてその後は、次の再会までの長い月日・・・・・。そんな、気が滅入ってしまう様な事を、たった今会ったばかりで、お花見も今から始まるという時点で、いきなり考えてしまったのである。
 「・・・・・でもまあ、せっかく念願叶って逢えたのだから、今はひたすら楽しもうじゃないか!」
 最後はこう、自らに言い聞かせた。そしてみんなが待つ会場に到着し、七絵もどんどんテンションが上がってくると、それに乗じて私もハジケてきた。


 七絵は私の事を、ふざけたニックネームで呼んできたり、去年のクリスマスパーティー以上の勢いで体当たりをかましてきたりと、時間が経つにつれて絶好調になっていった。そしてみんなで弁当を食べた後、私は七絵とほかの2人の子どもと一緒に、去年来た時には無かった、『おもしろ自転車広場』に行ってみた。そこでかなり長い時間を過ごしたのであるが、“交流”はたっぷり出来たし、ほかの子どもたちとも遊べて楽しかった。
 やがて『自転車遊び』は終了したが、その後私は一旦、中央口へ行く事になった。実は、仕事のためK子姉さんが午後からの参加となっていて、入場券は私が預かっていたので、到着したという連絡が入り、迎えに行ったのである。
 K子姉さんこそは、私が七絵に絡まれるのを見て、最も喜んでいた人。それだけに、午前中、七絵に散々ヤラレていた時に来ていなかった事は、正直残念に思っていたのだが、中央口から会場まで向かう途中、K子姉さんは期待に違わず、七絵の事を訊いてきた。私は即答した。
 「まあ覚悟していた通り、エゲツないですわ。去年よりマシになってるけど、やっぱり野生かな(笑)?でもまあ、あれも大きくなって、だんだん俺の事も忘れていきよるやろうし・・・・・(笑)。」
 本当は一番あって欲しくないことを、敢えて軽口をたたく様に言ってみせたのだった。それに対してK子姉さんは一言。
 「いや〜、そんな事ないでぇ。七絵ちゃんは、根箭さんオンリーやでぇ!」
 どこまでが冗談でどこからが本気かは分からないが、「そんな事、万が一にでも本当だとしたら、それこそ奇跡では済まされない!」と、内心叫びたくなったものである。この一言は今でも忘れられない。


 さて、K子姉さんがみんなと合流した後は、暫く他の人たちと遊んだり、記録画像を撮ったりしていたが、ふと気が付くと、私の持ってきたバドミントンセットが無い。バッグから見えるようにして置いてあったのだが、消えていたのだ。周りで何人もの人がバドミントンをしていたので、誰かが私のを使っているのだろうと思った。七絵も、オカンや別の子どもたちと、やはりバドミントンに興じていた。
 「その内1回でも一緒に出来るといいな。」と思いながら周りを眺めている内に、七絵がプレーを止めてこちらに戻ってきた。そして「これ誰の?」と見せてきたのが、何と私のラケットだったのだ。
 「ああ、俺のや。」と言うと七絵は、「あ、そうなんや。ありがとう。」と言って、ハネと一緒に返してきた。おぉ!俺の持ってきたセットを使っていたんや!
 その後、私もいざ自分のラケットで、同僚とプレーをしてみたのだが、どうも風が強くなってきた様で、全然プレーにならない。結局ほんの数分で中止となり、その後は全員集合して長縄やハンカチ落としをやったので、バドミントンをする事はもう無かった。七絵とプレーする夢も、残念ながら叶わずじまいとなったが、セット自体は結果的に七絵の役に立っていたので、その点では満足だった。


 16時30分、いよいよ終了の時がやってきた。
 出来るものなら来て欲しくないと思っていた『その時』が、遂にやってきてしまったのである。
 「もうそんな時間になったか・・・・・。」私は最初から分かっていた通り、名残惜しさが込み上げてきた。片付けの作業をしながら、気が滅入るのを必死で堪えていたのである。
 思う存分ハッスルはしたし、天気も最後まで好天。そして何よりも、肝心の七絵とはたっぷり絡めたのだから、満足な一日ではあった。しかしそれでも、永く待ち焦がれた時間に比して、あまりにあっけなく訪れる幕引きに、ある種、言い様のない不公平感を感じずには、いられなかった。もうこれからは、次なる【再会】までの長い月日が、横たわるだけとなるのだ。
 次なる【再会】・・・・・、それは今年のクリスマスパーティーの時である。12月まで、実に8ヶ月。果たして耐えられるのかどうか。でもまあ、今はハナという愛犬もいるし、季節的にはこれから好きな夏になっていって、日も長くなり、そういう意味では明るい気分で過ごせるだろう。
 人生、永遠に続く良い時間なんて、どこにも無い。未練任せに望んでも、『短命』こそが【至福の時】の定め。寿命は延ばせないのだ。それよりも、今日という日を無事に送れた事を喜ぼうではないか。
 七絵とは、帰り道でもほぼ隣同士の間隔で歩き、そのままモノレールでも一緒になった。そして向こうが先に降りて行ったので、車内でお別れとなったのだが、最後のギリギリまで一緒に居られたのは、昨年のクリスマスの時と同じ。それだけでも、幸運2連発である。
 「8ヵ月は長いが、次に再会した時も、七絵は絶対、俺の事を覚えているだろう。」
 そう、自分に言い聞かせて元気付けた、帰り道であった。





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