ハナの辿る運命は・・・・

 2005年3月に親戚宅にやってきたハナは、今年(2012年)で7歳、まだまだ一生の半分にも達していないと思う。

 ハナは最初から一匹天下で、庭付きの家の中で過ごし、エアコン完備、ベッドやソファーの上で寝放題、周りには親切で可愛がってくれる人が何人もおり、この上なく恵まれた犬と言える。だが・・・・・、一つ見方を変えると、実はこの犬は、最後は非常に哀れかも知れない運命を背負っている犬でもあるのだ。
 それはどういう事か?

 実はハナがやってきた時、2人いた飼い主は、若い方が81歳、年上の方は86歳という高齢で、とてもじゃないが、飼い犬が天寿を全うするまで生きているとは思えない年齢であった。当然、そのことに私が最初から気付かない訳はなく、前の愛犬の死後、ペットロスに苦しんでいた私が新しい愛犬の登場を喜びつつも、心の一方では一抹の不安を感じていた。
 「この犬は最後、どうなるんだろう・・・・・?」
 
 「そんなもんなぁ、あんたの家で引き取って、飼ってくれたらええねん。」
 ハナが来て2年後の夏に他界した若い方の飼い主は、いとも簡単と言わんばかりに話していた。確かに私もその可能性が現実問題、高くなるだろうと感じ、まだハナが子犬の頃、当時暮らしていた実家に一度連れて行って、一晩泊めた事もあった。その時は今後定期的に我が家に連れて行くという方針でいたのだが、結局そのあとは実現せずに終わり、現在に至っている。

 一人残っている飼い主は、3ヶ月前から入院中である(2012年1月現在)。まだ退院までには時間を要すると思われ、その間、ハナはずっと家の中で一匹ぼっちの状態だ。
 冬の家で、誰もおらず一匹ぼっち・・・・。いくら全身が毛で覆われていて、人間より寒さに強い生き物とは言え、やはりその場面を想像すると何となく哀れであり、何よりも傍に居てくれる人が一人もいないというのは、寂しいし可哀相だ。あの犬は犬一倍寂しがり屋で、人と一緒に居るのが好きなのである。

 私は定期的に会いに行き、餌をやったり散歩に連れて行ったり、ある時は仕事の後、ただ会いに行って一緒に過ごす様にしている。そして多くの日は、母が犬の世話を一手に引き受け、ことに朝の散歩はほぼ毎日行ってくれている。幸いにして母は早起きだから。私も以前、朝の散歩にもしばしば行っていたが、いかんせん朝に弱い・・・・・(汗)。

 今、実家は母親が一人で暮らしている。「母親が犬を家に連れて帰ったらいいのではないか?」という人もいるかも知れない。だが、うちには庭も無く、ハナもあまり長くは落ち着いて過ごさない面があったりして、実現は難しい。

 この先、現在93歳になっている飼い主が完全に世話出来なくなったら、どうなるのか?在宅生活が一番理想というのはあるのだろうが、なにぶん一人暮らし。母親も、あまり無理をしていろいろ背負い込むと、自身も身体がしんどくなってしまう。私も何とか助けにはなろうとしているが。
 もし飼い主が完全に在宅不可能となったら?そして何より、この世からいなくなってしまったら・・・・・。年齢面や体調面を考えても、いよいよ差し迫って考えなければならない時期に、入っていると思うのである。

 ハナの世話のために、特に母親が時間的に、どうしても制約を受けてしまうという現状がある。私に関してもそれは無くはない。周りから冷やかし半分に、「コリャ、ハナ。お前は迷惑犬やぞ(笑)」と言われている時がある。

 迷惑犬・・・・・。もちろん真剣に本気ではない。だけど、飼い主が去り、周りの人間だけで世話をしなくてはならなくなれば、人間の側には時としてそういう感情も出てしまうだろうし、それでもハナ自身に罪が無いことは、全員が承知している。
 みんな心のどこかではハナの事が好きだし、私もハナが大好きだ。だからやっぱり、最後まで傍に居てほしいという願いもあるのは本音だ。犬が居て大変な時はある。だけど同時に、潤う時も少なくはない・・・・・。

 果たしてハナは、最後まで住み慣れた場所で天寿を全うする事が出来るのだろうか?飼い主が去れば、今の家は当然、主不在となるから最早住めなくなる。次に行くところは・・・・・?やっぱり我が実家で引き取るのか?それも難しい面があるのは事実なのだ。母親も多少しんどい部分はあるし。私は?出来るだけ協力したい。「人間の無責任」という結末だけは招きたくない、絶対に。私なりに、ハナに恩があるから

 少し遠くの或る場所で、引き取ってもらう可能性がある。そこは私や母にとっては、40年来の親交がある、馴染みの人たちの場所。ある面解放されてくるが、会いに行くのは難しくなる。
 解放なのか?寂しさなのか?究極の選択だ。母親始め、周りに無理はさせなくない。自分一人の思いだけでは、事は決まらない

 それでも、何とかハナと接点を持てる環境は確保したい。正直な心境だ。
 どの道、否が応でも住む場所は変えさせられる。場合によっては、周りの人たちもガラリと入れ替えられる。それが避けられない運命に、飼われた当初からある。

 ハナの置かれた状況は可哀相なものだ。前半生は恵まれていたのに、後半生は或る意味不遇である。過去のどの犬も体験し得なかった定めを、ハナは背負っている。

 数年後は、どこまでハナに会いに行っている?


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